風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「熱い恋」サガン レビュー

サガンは中学生の頃から読んでいました。
10代の頃は朝吹登水子さん訳の新潮文庫を集めるのが「趣味」と言ってもいいくらいだったので、ほぼ全冊持っています。

ところがこの所、「悲しみよこんにちは」以外は読み返すこともなくなっていて、いつしか本箱の片隅に追いやられており、表紙どころか、中も黄ばんでボロボロ、非常に読み辛くなっていることに気づきました。
でもこれら新潮文庫サガンは、すでに絶版のため、サガンファンにとっては貴重本だそうで、出る度に買い揃えてきた私にとっても懐かしく、捨てられない本たちなのです。

そんな折、先日某中古本屋さんでまとまって並んでいたこの本たちに出会いました。数年前にも見かけたことがあるのですが、その時は持っているからと買いませんでしたが、今回は迷わず買って帰ったのでした。


そしてまず最初に読んだのが上の「熱い恋」です。

昨年来、漱石にはまっているので、倦怠感が零れ落ちそうなサガンワールドに初めのうちはもはやついていけないのかと思いました。でも読み進めるうちに、いや、やっぱりサガン作品には何かが横たわっていると感じるのです。

ストーリーを少しだけ書いておきます。

舞台はパリ社交界
寛大でお金持ちの五十男シャルルと同棲している若く美しいリシュールと、シャルルと同年代のお金持ちの女性のツバメのようなアントワーヌが出会い「熱い恋」に陥る。
そして最後は、やはりシャルルの元へ帰っていきます。


えっ、これで終わり?
あーなんてありがちな酷いストーリーだと思うでしょうか。

リシュールは自由を束縛するもの全てを憎み、働くことも悪だと思っているけれども、物欲もない。そこが今の若い子たちと大きく違うところじゃないでしょうか。
自分を何よりも愛してくれる人がいて、望めば何でも手にはいるけれども、心はいつも空虚。
これってセレブなマダムが陥る心境と似ているかもしれませんね。
そして、
リシュールは漱石「それから」の大助と重るのでは?!!と思いました。

 

サガンは1935年パリ生まれ(2004年没)

1867年生まれ(1916年没)の漱石と接点はないと思われます。

まさか漱石を読んでいたなんてこともないでしょうが、いずれにしても、時代や所が変わっても、この問題は普遍的だということですね。


「人はパンのみでは生きられず」
しかしパンもない生活を経験すれば、空虚な心などなくなってしまうのかな。今回はそんなことを感じました。

サガン、とびきりお洒落な小説を書く人です。
更年期に悩む女性に特にお薦めです(笑)