風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「モーツァルトの息子」池内 紀 レビュー

バッハ家は音楽一族として有名ですが、ベートーヴェンモーツァルトって、はて子どもがいたのかな? ピアノ教師の私でも知らなかったので、あの天才モーツァルトの息子と題名にあるだけで俄然興味がわき手に取った本です。

実はこの本、モーツァルトの息子の話だけでなく、実在したけれども歴史に消えてしまった数奇な運命を辿った30人のひとたちのことを書いています。その誰もが初めて聞く名でしたが、実に面白い人たちでした。

 


モーツァルトの息子」

モーツァルトには6人の子どもがいたそうです。その中で父に劣らない音楽の才能に恵まれたのは四男で、彼は14歳でデビューを果たします。

デビューはモーツァルトが「魔笛」を初演した劇場で、プログラムには「本日当劇場において晴れやかにモーツァルト二世が演奏会を行う」と書かれ、第1部は父モーツァルト交響曲ピアノ曲を息子が弾く。続いて息子の自作ハイドン73回目の誕生日祝典曲を初演する。第2部は父モーツァルト作「イドメネオ」から6曲、その後自作の幻想曲と変装を披露しました。

というように大変恵まれたデビューで、それなりの成功を収め以後は父と同じようにヨーロッパ中を旅してまわったのでしたがなぜだかパッとしませんでした。
神童だったモーツァルトの息子は20代でぐっと落ちて。30代ではただの人になり、、、、とはいえ、細々と作曲は続けて1828年「早春」を刊行、51歳のときには父モーツァルトの記念像が建てられたのに際して除幕式用の「祝典コーラス」を作曲しました。

ただしこの曲は父の作品から部分を撮って編んだらしく、「息子モーツァルトにより、選ばれ、編集され、テキストを添えられた」と説明がついているそうです。モーツァルト二世のその後のことはよく分かっていないそうです。1884年53歳で亡くなったそうです。


その他、「ゲーテの愛でし子」、「家具のなづけ親」、「スザンヌの微笑」「姿の消し方」「耳なしウィリー」「ヒトラーの兄弟」「フリーメイソン法典」などなど30の実話が載っています。

この中でも最高に面白かったのはウィーンのしながい小役人でありながら歴史的建造物に次々と自分の名前「キュゼラーク来たる」と落書きする男の話でした。(2012-09-17)