風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「春日局」杉本苑子 レビュー

お局さまという言葉は、徳川幕府の大奥のこの春日局からきているのは間違いなさそうです。

大河ドラマでの春日局は結構美人だったり意地悪ばかりが強調されたりと、描き方が極端ですが、芯が通っていて強い人だったと思います。

昨年のNHKの大河ドラマでは富田靖子さんが演じていましたが、なんだか可愛らしかったです。でも対するお江(ごう)役の上野樹理さんも将軍秀忠役の向井理さんもなんだかのほほんとして見えて春日局との対決らしきものも茶番に見えなくもなかったです。

さて、杉本苑子さんが描く春日局は、一言でいうと非常にいやらしい感じがします。もっといやらしいのは春日局が育てた竹千代、これはあまりにも酷く、いいところが一つも描かれていません。なんだかがっかりしました。

しかしながら史実を紐解くと、春日局の父は明智光秀に仕えた軍師 斉藤内蔵助利三で、春日局の名前はお福といいました。 

お福は家康に見い出され家康の孫の竹千代の乳母を務めたわけですが、将軍継嗣の舞台裏での活躍はもちろん、朝廷とのいさかいになった「紫衣事件」では険悪な朝廷関係をとりさばき、終身三代将軍家光の母代として大奥に威をふるいました。

現在、東京都文京区湯島の天沢山麟祥院の境内に夫の正成(乳母ですからもちろん夫がいたのですよねぇ)の稲葉氏の墓をかたわらにして、一際高い所にお福(春日局)のお墓があるそうです。これがお福夫婦の力関係を端的に表しているようです。


春日局」の他には「ひとだま半乃丞」「女形の歯」「耳塚のすみれ」「世は春じゃ」の4編が収められいますが、どの作品も何か冷たいものを感じてじまい私は好きなれませんでした。残念です。

(2012-06-20)