「ボクの音楽武者修行」小澤征爾 レビュー
言わずと知れた世界のマエストロ小澤 24歳のときのエッセイです。
小澤さんともなると、若くても考えることも行動も桁違いです。
「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土地、そこに住んでいる人を直に知りたい」と青年小澤はヨーロッパに旅立ちます。
ここまでは普通、いえ、小澤氏は昭和10年生まれですから、24歳当時の日本の情勢を考えると、こう思ってもすぐに実行できる人はほとんどいなかっと思いますが。
父親は歯科医だったので食べるには困らなかったもしれませんが、兄弟も多く、学校は皆「成城」に通っていたそうで、小澤兄弟もしょっちゅう学費滞納の張り紙をされたそうですから、決して余裕があったわけではなく、彼の熱意と度胸で進めた話だったようです。
それには船にスクーターを積み込み、スクーターの宣伝をしながらヨーロッパ大陸を走るみたいな工夫も施されています。
しかし小澤さんは大陸生まれだからなのか、根から明るい方ですよね、
頭も抜群によくて、人間的にとても優しい方、そしてユーモアのセンスもあって、若い頃のお写真を見るとかなりのモダンボーイ、今でいうイケメンです。その点は人より恵まれてらっしゃると思います(笑)
ヨーロッパに渡って半年後位に指揮者コンクールがあり、締め切りが過ぎていたにもかかわらず、あきらめずに奔走したお陰で参加を許され、いきなり優勝してしまいます。
その後は、カラヤンやバースタインにも認められ、ニューヨークフィルの副指揮者にまで就任し、、、現在に至るわけです。
いろいろとご苦労もあったことでしょうが、このエッセイには、苦労の文字が消えているようで、カリフォルニアの空のようなカラッとした明るさと、親や兄弟、仲間への優しい気遣いがふんわりと漂っています。
親としてみれば、理想の息子ですね。あー私もこんな息子が1人欲しかったなぁ。