風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「羅生門」「奉教人の死」他 芥川龍之介レビュー

百円ショップダイソーに「ダイソー文学シリーズ」というのがあり、ここに収められている本が結構いけます。
すべて著作権が切れているものなので、ダイソーなりの工夫が施されています。
その例を挙げると、まず文庫本なのに巻頭に作者や作品に関する丁寧な写真があります。これは文学好きには嬉しいです。
また若干余計なお世話かなと思うけれども、読むためのポイントや登場人物の説明、長編にはあらすじ、難しい語句にはページの下に注釈がつき、まるで国語の教科書のようなんです。文字も若干大きくて見やすく、あろうことか全篇豪華二色刷りなっています。二色刷りの本って、図鑑や参考書以外にみたことないですよね。

そして笑ってしまうのが、その作品や作者に関するエピソードを元に「スピーチや手紙に使ってみよう」というコラムまであります。果たしてこのコラムをまともに使う人がいるのかは疑問ですが、ここが百円ショップダイソーらしいところだと思いました。

 

何より嬉しいのが、夏目漱石宮沢賢治芥川龍之介太宰治森鴎外、その他山頭火、中也、白秋、朔太郎、藤村、子規、啄木、晶子に有島武郎
伊藤幸夫等々、すべて百円で買えるということです。やはりすごいですよね。


というわけで、芥川龍之介の短編、「地獄変」「羅生門」「藪の中」「奉教人の死」「歯車」を読みました。


この5作品のなかで印象に残るのは、「地獄変」と「奉教人の死」です。
もちろんこの5作品はいずれも内容は知っていましたが、改めて読むと、芥川の「心のすざましさ」が甦り、迫ってくるようでした。

場面がようで、表現の細かさ、確かさは、本を顕微鏡で覗いて見せてくれているような感じして「もういいわ、それ以上見せないで!」といいたくなる方もいるでしょうね。

地獄変」などは、まさにその極みです。

 

芥川作品をひとことでいうと「怖い」です。
でも「怖いものみたさ」の心理が働いて、読み進めるとその奥にひそむ温かさに触れることができるのではないでしょうか。

 

2009-11-13