風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「それから」夏目漱石 レビュー

漱石の3部作「三四郎」「それから」「門」のうちの二番目の「それから」ですが、主人公 代助は三四郎より「虞美人草」の欽吾に近いと思います。

 

代助は、今でいうパラサイト、ニートともいえる生活を送っているのですが、それが最も自然で正しいと思っており、生活のために働くほど愚なものはなく、「パンに関係した経験は、切実かもしれないが、要するに劣等だよ。パンを離れた水を離れた贅沢な経験をしなくちゃ人間の甲斐がない」と言っています。


そりゃ皆が皆、そうできればそれに越したことはないと思うのですが、これってある種の特権だから特権のない者に、上のようなことを言われても埒があきませんよね。
って、これは ひがみに聞えるかしら。

 

でも、「悩み」について思うのですが!種類や深さ、やるせなさって、同じだと思うのです。

これが「平等」っていうことかと思います。

代助は、友人の平岡に紹介した亡き友人の妹の三千代を愛していたことに気づき、三千代のためなら親や兄弟、友人平岡を失い、自らパンを稼ぐことになってもそれを厭わないと考え、半ば実行に移したところで、「それから」を想像させるところで終っています。


それから、、、に始まり、それから、、、で終る。
ゴッホのひまわりグルグル、まるでメビウスの輪のような「それから」という題名に感服します。


「それから」は1985年、代助=松田優作、三千代=藤谷美和子 平岡ー小林薫の豪華キャストで、森田芳光監督が映画化しています。

パラサイト予備軍を抱える親たちにもお薦めします。