風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「アンネ・フランクの記憶」小川洋子 レビュー

小川洋子さんの作品は芥川賞を受賞した「妊娠カレンダー」と他には2,3冊しか読んでいなかったのですが、この作品を読み、小川さんのファンになってしまいました!

アンネの日記」は子どものための本ではなく、またユダヤ人弾圧時の研究材料のためのものではないと思います。

小川さんがアンネの日記を読み純粋に感動したのは、アンネの「言葉が心を表現していること」にでした。そして小川さんは、作家になろうと決心するのです。

私は小川さんのその感覚がよくわかるのです。小川さんと同じく、少女期にアンネの日記を読んだ私はアンネが悲劇的な境遇にあったユダヤ人であることにすら思いが及ばないほど無知だったので、アンネの描く隠れ家生活に憧れさえ抱いていしまうほど、つまりはアンネ自身に魅了されました。

成人してから、某デパートに巡ってきた「アンネフランク展」を見たときに初めて ユダヤ人であるアンネの悲劇に目が向き、映像としては2002年の映画「戦場のピアニスト」で映し出されたゲトーの様子がアンネの境遇と同じであったと思いあたりました。

アンネの日記」が日本で翻訳され出版されたのは1952年だそうです。戦争後わずか7年です。最初の訳者は皆藤幸蔵という方で、私の手元にあるのはその皆藤さん訳のもので1976年版です。
その後、皆藤さんが他界され、1985年頃深町眞理子さん訳のものが文藝春秋から出ています。また、「アンネの日記 完全版」、「アンネの日記 研究版」なども出ていることを、小川さんの本により知ることができました。完全版はすぐにでも読みたいと思いました。

小川さんが、心の友アンネを取材するため、オランダへ旅立ったのは10年前のこと。その時にはアンネの唯一無二の親友ヨーピさんや隠れ家のアンネ一家を支援した恩人ミープさんも生きていらしたのです。なんて幸運なこと!

もし今再び「アンネの日記」を読むなら、小川洋子さんのこの「アンネ・フランクの記憶」も合わせて読むことを強くお奨めします。