「海辺のカフカ」村上春樹 レビュー
1979年デビュー作「風の歌を聴け」にはまり、1987年の「ノルウェーの森」を読むまでは、村上春樹さんはとても好きな作家だったのですが、「ノルウェーの森」以降、作品にも村上春樹さんとにも興味を失っていた時期があります。
でもやはり作品に出会うと気になって、その後も短編集「パン屋再襲撃」や「ねじまきクロニクル」も読んでいたし、当然「アフターダーク」も読みました。
そして残念なことに、村上春樹さんの頭の中でブンブン飛び回っていたハエはまだ追い払われていなかったのだと感じてしまったわけですが、、、。
今頃になって読んだこの2002年発表の「海辺のカフカ」は、もうかなり良くて、あらためて村上春樹さんに感激しています。
さて、「海辺のカフカ」ですが、村上春樹作品の集大成と書かれている評論もあるように、井戸はかなり深いところまで掘られていました。
掘り方は相変わらずの村上流で、目新しいことがないばかりでなく、またかぁ、まだかぁと思わなくもないのですが、主人公のカフカ少年の動きと別なところで非常に重要な役割を担っている 俺っちことホシノ君とナカタさんが実にいいんです。
特にナカタさんには本当に色々なことを教えられました。それがこの作品でもっとも感動したところです。
このコンビは、今まで村上氏が書きたくても書けなかったことを、堂々とやっちゃっているし しゃべっているような気がしました。
村上氏の作品の主人公はいつも同じようなキャラで状況設定も相変わらずだなぁと感じていたのです。
例えば、主人公は異常なくらい清潔でよく歯を磨きヒゲを剃る、チノパンツとポロシャツが好き、ロックとクラシックに詳しい、パスタと珈琲が好きで、和食は出てこない、読書家で図書館が出てくる 女性が出てきたら形の良い耳の描写がある等々。
だからこの「海辺のカフカ」のナカタさんとホシノ君がよけい光って見えるのかもしれません。
この本は村上春樹を読んだことがないという人が最初に読むのもいいかもしれません。あーでもファンタジー作品のような訳のわからない部分があり、それは未解決のままですが。
それなのに幕は実にきれいに下りていきました。
2008-07-31 01:03 i