風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「李謳(りおう)」髙村薫 レビュー

李謳(りおう)は、月夜の晩にしなやかな身体をゆらし踊る美貌のスパイ、殺し屋なのだ。李謳と比べれば平凡な一彰と出会ったとき、二人とも22歳でそれは運命の出会いだった。

いやぁ久々に惚れました。そう李謳に。

髙村薫さんの描く男は、たいがい危険であるがとても魅力的だ。
中でもこの李歐は最高にいい。毎夜、この本を読み進めるのが実に楽しみだった。

李謳は中国人、両親は幼い李謳を連れて東大に留学していたらしい。
もうこれだけで李歐の遺伝子が優秀だということがわかる。

李歐は国家のスパイになり、必然的に人をも殺すことになる。

李歐は一彰に約束した通り中国大陸に広大な土地を求め五千本の桜の木を植え、理想郷を作る。一彰が息子とともにそこにやってきたのは李歐と約束してから実に15年後だった。

5月、五千本の桜が咲いた。李歐は、花の妖気に誘われるように昔と同じファルセットで歌い、薄い布を波のように振り流しながら、全身を春の喜びに震わせ、その手指を腕と脚で大地と天空の光全部を抱くようにして踊った。



2011-08-29