風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「眠れる美女」川端康成 レビュー

表題の「眠れる美女」の他「片腕」、「散りぬるを」の三篇が収められていました。
もっとも興味深かったのは、解説を三島由紀夫が書いていることです。
これってかなりすごいことですよね。

眠れる美女
三島由紀夫によれば、この作品を文句なしの傑作と呼んでいる人が一人いて、それはエドワード・サイデンスティッカー氏だそうです。そしてエドワード氏と自分の文学観は夏と冬ほど違うとも書いています。
残念ながら私はエドワード氏を全く知らないのですが、三島由紀夫は読んではいてもなかなか理解しがたいと感じています。

で、この作品ですが、ものすごくエロティックで、この部分はいいとしても、あまり気持ちがいい作品ではなく、暗く気持ち悪さが残る作品だと思います。つまり好みではないということですが、こういうことを考える川端康成氏には感服しました。


「片腕」
これもカフカの変身を思い出されるような、いわば気味の悪い話と言えるのではないでしょうか。なんせ、自分の片腕と美しい女の片腕を交換し、一晩過ごす話なのですから。これだけでも読みたくないと思う方がいそうです。たぶん若い女性が読むのは無理だと感じがします。
でも男性には俄然興味がわいたという方もいるような気がします。
私は上の「眠れる美女」よりは、ずっと受け入れられる作品でした。


「散りぬるを」
三篇中、一番短い話であるのに、読み終えるのに、とても時間がかかりました。途中、いつになったら読み終えられるのかと何度も思いましたし、なぜいっきに読むことができないのかと、自分にいら立ちすら感じました。
数ページ読んでは戻りの繰り返しだったので、たった50数ページに3週間はかかったと思います。

そのわけは、三島由紀夫の解説で、少し納得がいったように思います。

三島氏は「散りぬるをは今読み返しても古びていない精密周到な作品である。古びていないのは、その静けさのためであるらしい。氏(川端)はどこで芸術におけるこの静寂を手に入れられたのであろうか。殺人犯人三郎の寂しさは「生に媚びようとして、死を招いた」のであったが、この犯人の心の中にこうした寂しさを透視する作者の心は、決して「生に媚びようと」したことはなかった。それが氏を「眠れる美女」や「片腕」まで歩ませた。一抹の陶酔さえ知らぬ道程である」と書いており、いっきに読めなかったため繰り返し何度も読む羽目となった私には、三島氏のいうことがわかるような気がしました。

 

2011-08-04