「ジャズと爆弾」中上健次VS村上龍 レビュー
村上龍さんが「限りなく透明に近いブルー」で芥川賞を受賞した後の中上さんとの対談+短編小説+エッセイが収録されています。
龍さんはまだ24歳、中上さんは30歳の頃です。
村上龍は知っていても中上健次を知らない方も多いと思いますが、中上健次さんは1976年「岬」で戦後生まれ初の芥川賞作家となり、1992年腎臓癌のため46歳で亡くなりました。
作家として脂が乗っていた時の早すぎる死に私も非常に残念に思っています。
そんな芥川賞の先輩中上氏と龍さんの対談は、当時、誰もが望んでいたことで、それが文庫本になるとすぐに買い求めて読んだのですが、当時の私にはちんぷんかんぷんでした。
それから30年近くも経ち、この本を本箱から見つけたときは「あら、まだ持っていたんだ」と驚きました。
さて、ちんぷんかんだったあれやこれ 今なら少しはわかるようになっていたかといえば、実はNOでました(^^;)
ま、いいんです。この二人が対談をして大いに盛り上がってくれればそれで。みたいな雰囲気が当時もあったような気がします。
今回改めて読み、中上さんのなかに淀んでいる焦燥みたいなものを強く感じました。
龍さんはまだ子どもでしたね、だからこんなに中上さんにいじられている(笑)
願わくば、今、この二人の対談があったらなと思わずにはいられません。
中上健次作品は残ると言われていますが、草食系がもてはやされている今、この骨太の作品を読みこなせる若者が果たしているのだろうかと思います。我々世代ですら大江健三郎になかなか近づけなかったように。
余談ですが、中上健次氏の妻は作家の紀和鏡、長女は作家の中上紀、次女は陶芸家で作家の中上菜穂です。一度だけテレビ番組でジャズを歌う中上氏を見たことがありますが、大ちゃんこと朝潮親方にそっくりだったことも付け加えておきます。