風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「おとうと」幸田 文 レビュー

幸田露伴の娘、文さんの作品です。朝日新聞で催されていた読者と一緒に読む本にも取り上げられていたのでいつか読みたいと思っていました。

読み進むうちに、もしかしたらこの作品はドラマ化され、見た事があるかもしれないと思いましたが、ドラマ化されたかどうかはわかりません。

物語は、名の知れた作家の父と病気持ちで冷たい継母(当時では珍しいクリスチャン)、げんという名の主人公、その3つ下の弟で不良の碧朗、家族の話です。

私も2つ違いの弟がいるので、姉のげんの気持ちはわかる部分が多いです。

ただ時代が違うので、何があっても、私にはげんのように自分を抑えることはできないと思いました。

げんの優しさはイコール明治の女性の強さかなと思うのですが、この時代の女性の心の在り方は日本が誇れる「美」の一つだと思うほどです。素晴らしいです。

一方、弟の方は、こちらも明治男の典型的な金持ちの家の子、すなわち無鉄砲、よくいえば純粋な人物です。ここに下に兄弟が沢山できれば、長男としての自覚も芽生えるのでしょうが、兄弟の少ない家の末っ子の長男って、わがままになりがちかもしれませんね。

その好き勝手をした弟が若くして結核にかかってしまいます。その看病は病弱な継母に代わり当然げんが担いました。

結核は今と違って死に至る病なので、碧朗の最後は悲惨でした。

それは病人の碧朗よりもむしろ必死で看病するげんの姿があまりにも痛々しいかったからかもしれません。

人は死にいく者の悲しみより、後に残された者の悲しみの方が深いのかもしれないですね。
しかしながらその悲しみは徐々に癒されていくものと思いたいです。

 

2010-10-17