風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

ラインマーカーズ」穂村弘 「子らよ 羽ばたけ」秋吉 信子 レビュー

 

今や押しも押されぬ歌人 穂村弘さんが2003年に出された自薦ベスト版歌集。
大半が少女まみと「穂村弘」の対話の形式をとる不思議な歌の数々ですが、私は手放しで全部好きとは言えませんでした。

まみが発している言葉とはいえ、ときどき、いえ度々穂村さんが出てくる。穂村さんにもどったときの歌の方がずっと好きです。

たとえば

・ねだられて人魚に渡す襟章はとどろく春の潮騒のなか

などはとても好きです。


でも

・「海へ10キロ」で何故だか思い出す転校生がもらしたうんこ

なんてのは、どうなの??


感覚歌人などとも呼ばれる穂村さんですが、そもそも言葉の感覚が鋭い人が歌人になるのではと思ったりします。

でも中には普通と変わらないと思える歌人もいるのです。

穂村弘さんの「ラインマーカー」と同じ時に買い求めたので、余計にその普通感覚が目立って見えたのかもしれませんが。

 

 

「子らよ 羽ばたけ」秋吉 信子

あとがきに
専業の主婦なるも吾十余年を短歌詠みて日日豊かなり

とあります。全くその通りでしょう。あやかりたいものです。


秋吉さんは日常の一こまを、とてもすなおに詠んでいらっしゃいます。


・コンクールに娘の中学のブラスバンドは見事にも銀賞を受く

 

・サッカーに励む息子に持たせむとペットボトルに麦茶凍らす

 

短歌って、これでいいの? 
これがいいのよ と 言われているような歌ばかり。

 

衝撃もものすごい感動もありませんが、「あーー私と一緒、家の家族とおんなじだわ~」と共感をよぶところが、秀歌の条件の一つであるようです。

 

・焼きさんまに大根おろしとすだち添う夕餉に子らのチョべりグーの声

 

・女の雛の優しき笑みに我が常を思いて今宵子らを叱らず

 

2009-09-22