「博士の愛した数式」小川洋子 レビュー
2004年、第1回本屋大賞および第55回読売文学賞 受賞作品。
発売された時から気になっていた小説です。やっと読む機会に恵まれました。
先に映画を観ていて、映画もとても良かったのですが、小説は映画よりもさらに良かったです。
登場人物は事故のため記憶が80分しかもたない元数学の博士、博士の家の家政婦となった私、博士にルートと名付けられた家政婦の10歳の息子、博士の恋人だったと思われる義理の姉、このたった4人で、ストーリーのほとんどは博士の住む小さな家(母屋の離れ)で起こるのですが、世界が無限に広がるような感覚に陥りました。
博士のルート(子ども)に対する優しさに打たれます。またいくつもの数式や証明がでてきますが、数学は苦手で数式もほとんど覚えていない私でさえ、それらの数式が邪魔だとは思わず、むしろ美しくさえ感じられました。
博士は私やルートのどんな質問にも「すばらしいことに気がついたね」といい、とても易しく丁寧に教えてくれます。博士はとても素晴らしい教師です。
博士と同じくらい愛おしいのが、ルートと家政婦の母親です。
この家政婦さんの作る料理にはどれも愛がこもっています。
またどんな悲しい場面も美しいです。
美しすぎるきらいはあるけれど、心が温まるとてもいい小説でした。