風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

「古 都」 川端 康成 レビュー

川端康成 晩年の作品(朝日新聞連載作品)です。 心身ともに危機の状態(執筆終了後東大病院に入り10日間意識不明に陥り、その間に肺炎と腎盂炎を患ったが本人は知らなかったとのこと)で、眠り薬でもうろうとしている中で書き進めたと後書きで書いておら…

「波の上の魔術師」石田衣良 レビュー

あの銀行を撃ち落とせ!謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの“おれ”だった。マーケットのAtoZを叩きこまれた青年と老人のコンビが挑むのは、預金量第三位の大都市銀行。知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは…。新時代の経済ク…

「格差社会」橘木俊詔 レビュー

この春から経済学部経済学科に進むことになった次男に早速大学から課題が送られてきて、それがこの「落差社会」を読み2つのレポートを書くことでした。 経済に疎い私ですが「結構読み易かった」と次男がいうので挑戦してみました。 非常にわかりやすく説明…

「マダム貞奴」杉本苑子 レビュー

朝日新聞のbe土曜日の愛の旅人を毎週楽しみに読んでいます。昨年、この貞奴(伊藤博文に水あげされた芸者)と川上音ニ郎、福沢諭吉の娘婿になった福沢桃介の三角関係を書いた愛の旅人が頭に残っていて、ちょっと手にとってみました。杉本苑子さんを読んだの…

「愛新覚羅浩の生涯」渡辺 みどり レビュー

天皇家につながる華族の姫君であった嵯峨浩さんは、満州国の愛新覚羅溥傑(あいしんかくら ふけつ)と結ばれました。 日本軍による政略結婚ではありましたが、溥傑という人は兄の満州国のラストエンペラー愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)よりも人間的に…

「模倣犯」宮部みゆき レビュー

「週刊ポスト」誌上で1995年から足掛け5年連載され、2001年に加筆改稿され単行本化されるやいなや空前の大ベストセラーになった作品を今さらながら読みました。 1巻目は休み休み読むことができたのですが、2巻に入ったとたん休むことができなくなり、ラス…

「ポケットにライ麦を」他アガサクリスティ レビュー

アガサクリスティを3冊続けて読みました。 「ポケットにライ麦を」「オリエント急行殺人事件」「ブルートレイン殺人事件」 いずれも以前読んだ本ですが、もうずいぶん前のことなのですっかり内容を忘れていました。と思いながら読み進めていくと、ところど…

「半島を出よ」村上龍 レビュー

村上龍さん2003年の長編小説です。当初からすぐに読みたいと思っていたのですが、文庫化され、ゲームまで登場してからやっと手に取ることができました。 先に書いておきますが、読後の私的勝手評価はBでした。 私は龍さんのファンを公言していますが、よく…

「サウスポー・キラー」水原秀策 レビュー

第3回「このミステリーがすごい!」大賞 受賞作品だそうです。 まず、ミステリー作品には、多くの賞が用意されているものだとこのネーミングとともに感心してしまいました。 村上龍氏、渾身の1冊の後の息抜きに読んだものですが、大賞を取るだけあって、よ…

「千里眼 美由紀の正体」松岡圭祐 レビュー

この作品で、あの千里眼 美由紀の正体が暴かれるとなれば読んでみたくなるのは当然でしょうが、私はこのシリーズにだいぶ前から飽きていてヒマ潰しに読み始めました。 なんだか、戦闘シーンは「24」の真似?、美由紀はAVを受けていたらしい。 あー、読む必…

「誰のために愛するか」他、曾野綾子 レビュー

久しぶりに曾野 綾子さんを読みました。曾野綾子さんのご主人は、三浦朱門さんですね、 エッセイばかり4冊読みました。実は曾野 綾子さんの小説は1冊も持っていなくて、読んだことがありません。 タイトルの「誰のために愛するか」を見て、非常に懐かしく…

「ワイルド・ソウル」垣根涼介 レビュー

2003年に幻冬舎から出版されたロングベストセラーです。大藪春彦賞、吉川栄治賞、日本推理作家協会賞の三冠に輝く作品。 「ソウル」というのは韓国のソウルではなく「魂」の意味です。 幻冬舎という出版社は、いい作品を出しますよね。いい作品に出会う…

「海辺のカフカ」村上春樹 レビュー

1979年デビュー作「風の歌を聴け」にはまり、1987年の「ノルウェーの森」を読むまでは、村上春樹さんはとても好きな作家だったのですが、「ノルウェーの森」以降、作品にも村上春樹さんとにも興味を失っていた時期があります。 でもやはり作品に出会…

「ハリー・ポッターと死の秘宝」J.Kローリング レビュー

言うまでもなくこの夏(2008年)に出たハリーポッター最終巻です。またしても上、下2巻セット 3800円は高い!あまりにも高いので、すぐに買うのほ躊躇したのだけど、やはり新刊を買ってしまいました。 ハリーポッターは、我が家にとって家族で楽しめる数少…

「隼人」郷 隼人歌文集 他 レビュー

「短歌」のサークル(web上)に入れて頂いて数ヶ月経ち、一作も詠むことがないまま、夏休みの宿題が出されたので、とりあえず家にある歌集を読んでみたのです。 「あなたと読む恋の歌 百首」俵 万智「サラダ記念日」俵 万智「チョコレート革命」俵 万智「み…

「こころ」夏目漱石 レビュー

川端康成の上をいく衝撃、非常に面白かったです。 「こころ」は高校生の時に読みました。 そして大学の文学の講義でもう一度読んでから、またかなりの年月が経ちました。 学生の頃、文中の「私」は私だったのに、今は「先生」が私になっていました。 この先…

「草枕」夏目漱石 レビュー

智に働けば角が立つ。 情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 この「草枕」の冒頭は誰もが知るところ、そして日本人なら納得の文章だと思います。でもこの後に続く文章を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか…

「時が滲む朝」楊 逸(ヤン・イー)レビュー

「文藝春秋」(2008年)9月特別号を買いました。上半期の芥川賞が中国人の楊 逸(ヤン・イー)さんに決まり、講評も合わせて読みたくて久々に買いました。 今回の芥川賞の選考委員は、石原慎太郎、髙木のぶ子、池澤夏樹、村上龍、川上弘美、黒井千次、宮本輝…

「池袋ウエストゲートパーク3」石田 衣良 レビュー

文藝春秋を隅から隅まで読んでいたら1ヶ月も経ってしまいました。 次に手に取った夏目漱石(3冊目)は「虞美人草」。これが難解で1ページ読むか読まない内に眠ってしまうので、いっこうに進みません。 そういうときは平行して別なものに手を伸ばします。 …

「夜中の薔薇」向田邦子 レビュー

向田邦子さんが飛行機事故で亡くなってから、もうどれくらいの年月が経つのでしょうか。 もう向田さんを知らない世代が多くなっているのがとても残念です。 向田さんといえば、「寺内貫太郎一家」を思い出す年配の方が多いと思いますが、私は、向田さんのエ…

「ツ、イ、ラ、ク」姫野カオルコ レビュー

姫野カオルコさんのお名前は以前知ってはいましたが男性か女性かも分からず、もちろん年齢も知りませんでした。作品を読んだのもこれが初めてでした。 最初からぐんぐん引き込まれ 数ページで作者は同世代だと確信しました。 つまり自分の子ども時代にリンク…

「スプートニクの恋人」村上春樹

日曜日は新聞を読む時間が長くなります。それは「読書」のコーナーがあるからです。そこで紹介されている本は、あー読みたいとすぐに思わせる本があり困ってしまいます。 もちろんこれは興味ないからパスというのもあるし、この要約されたものを読めば充分だ…

「虞美人草」夏目漱石 レビュー

やっと読み終えました!出だしが読みづらくて、また挫折かなと思ったのですが、いつしか夜のお楽しみ~になっていました。 では早速、今回は真面目な感想文です(笑) 私は謎の女(と書かれている)甲野欽吾の義母の心算が、それほど非常識だとは思わないので…

「食堂かたつむり」小川糸 レビュー

この小説はちょうど1年前に発表になり、春にはメディアで評判になっていたことは知らず、手に取ったのは全くの偶然でした。久し振りに行った古本屋さんでめぼしい本を10冊ほど漁った後、ふと目に留まり(値段がついていなかったので)「安かったら買おう…

「無名仮名人名簿」「男どき女どき」向田邦子他 レビュー

この年末年始は向田邦子さんをはじめ、作家の随筆を沢山読みました。 向田邦子さんはじめと書きましたが、作家の随筆を読み返したいと思ったきっかけは、漱石の随筆「硝子戸の中」を非常に興味深く読んだからです。 漱石の「硝子戸の中」については他に書く…

「松風の家上・下」宮尾登美子 レビュー

茶道家 千利休の祖とする(裏千家)一族の明治、大正時代の孤高の歩み、愛憎の歴史を描いた作品で、文藝春秋読者賞受賞作品です。 茶道に触れたことすらない私でも興味尽きなく、茶人ばかりでなく、裏で支える女たちや、使用人の生き方までもすざましく、た…

「硝子戸の中」夏目漱石 レビュー

漱石、晩年の随筆集で、大正4年1月13日から2月23日まで「朝日新聞」に掲載された小品です。 晩年の漱石は胃潰瘍が悪化し、終日、硝子戸の内にこもって、庭を眺めるか、子ども時代を思い出しているかで、せいぜい断わりきれなかった客人と向かい合うく…

「書を捨てよ、町へ出よう」寺山修司 レビュー

寺山 修司 (てらやま しゅうじ、1935年12月10日 - 1983年5月4日)は、日本の詩人、歌人、俳人、エッセイスト、小説家、評論家、映画監督、俳優、作詞家、写真家、劇作家、演出家など。演劇実験室・天井桟敷主宰。本業を問われると「僕の職業は寺山修司です…

「アンネ・フランクの記憶」小川洋子 レビュー

小川洋子さんの作品は芥川賞を受賞した「妊娠カレンダー」と他には2,3冊しか読んでいなかったのですが、この作品を読み、小川さんのファンになってしまいました! 「アンネの日記」は子どものための本ではなく、またユダヤ人弾圧時の研究材料のためのもの…

「夕顔」白洲正子 レビュー

偶然というのは本当に面白いものだと思います。偶然と必然とは同義語だという考えもあるらしい。 先月、従兄弟の結婚式に出席するため、大阪、神戸に旅した時、一人旅だから本を読む暇もあるだろうと、鞄に文庫本を2冊入れていきました。 その1冊は、前に…