風の詩(うた)

ジェジュンとAB6IXを中心にK-POPの音楽レビューを書いています。読書レビューは過去記事です。

読書の記録

「草枕」夏目漱石 レビュー

智に働けば角が立つ。 情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。 この「草枕」の冒頭は誰もが知るところ、そして日本人なら納得の文章だと思います。でもこの後に続く文章を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか…

「時が滲む朝」楊 逸(ヤン・イー)レビュー

「文藝春秋」(2008年)9月特別号を買いました。上半期の芥川賞が中国人の楊 逸(ヤン・イー)さんに決まり、講評も合わせて読みたくて久々に買いました。 今回の芥川賞の選考委員は、石原慎太郎、髙木のぶ子、池澤夏樹、村上龍、川上弘美、黒井千次、宮本輝…

「池袋ウエストゲートパーク3」石田 衣良 レビュー

文藝春秋を隅から隅まで読んでいたら1ヶ月も経ってしまいました。 次に手に取った夏目漱石(3冊目)は「虞美人草」。これが難解で1ページ読むか読まない内に眠ってしまうので、いっこうに進みません。 そういうときは平行して別なものに手を伸ばします。 …

「夜中の薔薇」向田邦子 レビュー

向田邦子さんが飛行機事故で亡くなってから、もうどれくらいの年月が経つのでしょうか。 もう向田さんを知らない世代が多くなっているのがとても残念です。 向田さんといえば、「寺内貫太郎一家」を思い出す年配の方が多いと思いますが、私は、向田さんのエ…

「ツ、イ、ラ、ク」姫野カオルコ レビュー

姫野カオルコさんのお名前は以前知ってはいましたが男性か女性かも分からず、もちろん年齢も知りませんでした。作品を読んだのもこれが初めてでした。 最初からぐんぐん引き込まれ 数ページで作者は同世代だと確信しました。 つまり自分の子ども時代にリンク…

「スプートニクの恋人」村上春樹

日曜日は新聞を読む時間が長くなります。それは「読書」のコーナーがあるからです。そこで紹介されている本は、あー読みたいとすぐに思わせる本があり困ってしまいます。 もちろんこれは興味ないからパスというのもあるし、この要約されたものを読めば充分だ…

「虞美人草」夏目漱石 レビュー

やっと読み終えました!出だしが読みづらくて、また挫折かなと思ったのですが、いつしか夜のお楽しみ~になっていました。 では早速、今回は真面目な感想文です(笑) 私は謎の女(と書かれている)甲野欽吾の義母の心算が、それほど非常識だとは思わないので…

「食堂かたつむり」小川糸 レビュー

この小説はちょうど1年前に発表になり、春にはメディアで評判になっていたことは知らず、手に取ったのは全くの偶然でした。久し振りに行った古本屋さんでめぼしい本を10冊ほど漁った後、ふと目に留まり(値段がついていなかったので)「安かったら買おう…

「無名仮名人名簿」「男どき女どき」向田邦子他 レビュー

この年末年始は向田邦子さんをはじめ、作家の随筆を沢山読みました。 向田邦子さんはじめと書きましたが、作家の随筆を読み返したいと思ったきっかけは、漱石の随筆「硝子戸の中」を非常に興味深く読んだからです。 漱石の「硝子戸の中」については他に書く…

「松風の家上・下」宮尾登美子 レビュー

茶道家 千利休の祖とする(裏千家)一族の明治、大正時代の孤高の歩み、愛憎の歴史を描いた作品で、文藝春秋読者賞受賞作品です。 茶道に触れたことすらない私でも興味尽きなく、茶人ばかりでなく、裏で支える女たちや、使用人の生き方までもすざましく、た…

「硝子戸の中」夏目漱石 レビュー

漱石、晩年の随筆集で、大正4年1月13日から2月23日まで「朝日新聞」に掲載された小品です。 晩年の漱石は胃潰瘍が悪化し、終日、硝子戸の内にこもって、庭を眺めるか、子ども時代を思い出しているかで、せいぜい断わりきれなかった客人と向かい合うく…

「書を捨てよ、町へ出よう」寺山修司 レビュー

寺山 修司 (てらやま しゅうじ、1935年12月10日 - 1983年5月4日)は、日本の詩人、歌人、俳人、エッセイスト、小説家、評論家、映画監督、俳優、作詞家、写真家、劇作家、演出家など。演劇実験室・天井桟敷主宰。本業を問われると「僕の職業は寺山修司です…

「アンネ・フランクの記憶」小川洋子 レビュー

小川洋子さんの作品は芥川賞を受賞した「妊娠カレンダー」と他には2,3冊しか読んでいなかったのですが、この作品を読み、小川さんのファンになってしまいました! 「アンネの日記」は子どものための本ではなく、またユダヤ人弾圧時の研究材料のためのもの…

「夕顔」白洲正子 レビュー

偶然というのは本当に面白いものだと思います。偶然と必然とは同義語だという考えもあるらしい。 先月、従兄弟の結婚式に出席するため、大阪、神戸に旅した時、一人旅だから本を読む暇もあるだろうと、鞄に文庫本を2冊入れていきました。 その1冊は、前に…

「もし君と結ばれなければ」岡 しのぶ レビュー

昨夏、短歌のコミュに入ってから、本屋(たいていは古本屋)に行く度、歌集コーナーも覘くようになりました。 歌集は価値が高いのか、古本屋でも結構な値がついています。 しかも悲しくなるほど入荷数が少なく、いつ行っても変わり映えのしないコーナーです…

「ある微笑」他 サガン レビュー

「悲しみよこんにちは」の後、待たれたサガンの2作目。 その期待は裏切られることなく、絶賛を受け、サガンは弱冠二十歳にして確固たる文学的地位を得ました。 さて、先に少しあらすじを書いておきます。 「主人公はソルボンヌ大学法学部に通うドミニクとい…

「それから」夏目漱石 レビュー

漱石の3部作「三四郎」「それから」「門」のうちの二番目の「それから」ですが、主人公 代助は三四郎より「虞美人草」の欽吾に近いと思います。 代助は、今でいうパラサイト、ニートともいえる生活を送っているのですが、それが最も自然で正しいと思ってお…

「チームバチスタの栄光 」海堂 尊 レビュー

2005年第4回「このミステリーがすごい!」大賞に輝いた作品です。 この受賞後 海堂 尊(医学博士)さんは次々とベストセラーを出し続け、その作品はドラマや映画化され大ヒットさせています。 何もいうことがないほど、面白かったです。旅行のお供にもいい…

「話を聞かない男、地図が読めない女」レビュー

随分前にベストセラーになった本ですが、再読しました。 これを読めば、男4人の家で暮らす女一人(私)の大変さが、わかってもらえると思います。 わかってはいたけれど、やっぱり男って、、、気づいてはいたけれど、やっぱり女って、、、みんなそうなのね…

「放浪記」林 芙美子、「布団」田山 花袋 レビュー

森光子さんの「放浪記」の舞台裏の番組を見た後に原作を読んでいたら、田山花袋「布団」、島崎藤村「破壊」も読みたくなりました。 「布団」は本箱にあったのですが!藤村の「破壊」は見つかりませんでした!「破壊」は一度も読んだことがなかったのかもしれ…

「小さな恋のものがたり」みつはし ちかこ レビュー

このチッチとサリーの恋の物語に夢中なったのは、昭和世代の女性だけではないでしょう。 「ちいさな恋のものがたり」はなんと1963年から40年間も毎年5月に発刊されてきました。平成になっても変わらず昭和らしい昭和の匂いがぷんぷんする抒情マンガなので…

「痴人の愛」谷崎潤一郎 レビュー

この本も長い間家の本箱に眠っていました。二十歳の頃に買っていたようです。こういう難しい?本を当時ちゃんと読んでいたのか、否か。正直に言いますと、ちゃんとは読んでいません。でも「ナオミ」という名が妖婦の代名詞というのは、インプットされていま…

「小さな恋の万葉集」上野誠 レビュー

2009年6月14日から1週間、当地の紀伊国屋書店で「万葉集 享受の世界」と題して、國學院大學所蔵の平安時代の写本等の展示会が開かれており、早速出かけてきました。今回見ることができた最も古いものは、平安時代の「元暦校本万葉集断簡(有栖川切)と呼ば…

「黒い雨」井伏鱒二 レビュー

新潮文庫の100冊キャンペーンは1976年に始まったそうですから、私の本好きを決定づけたのはこのキャンペーンのお陰といっても過言ではないかもしれません。この100冊読破を目指して、まずは目についた本から買い求めていた(青春の)日々が懐かしいで…

「白痴」坂口安吾 レビュー

「白痴」は過去に新潮文庫100冊に入っていたと思うのですが、いつからか坂口安吾さんの本はエッセイ集「堕落論」が入っています。「白痴」と「堕落論」(未読です)は同時代(昭和21年)に発表されました。いうまでもなく戦後間もなくの作品で、自由に…

「坊っちゃん」夏目漱石 レビュー

そういえば 夏目漱石の「坊っちゃん」は、きちんと読んでいただろうか、結末はどんなだったかなと思い、手に取りました。 いやぁ、すっごく面白かったです!愛すべきは、ぼっちゃんと清、そして山嵐。 松山の人びとが、田舎者と馬鹿にされていようが、ぼっち…

「斜陽」「人間失格」「晩年」太宰 治 レビュー

先週から日曜日の朝日新聞で重松清さんと月に1冊ずつ名作を読む「百年読書会」というのが始まっています。その1冊目が太宰治の「斜陽」で、早速ひっぱり出して読んでみました。 一体いつ何歳の時にこの本を読んだのか、カバーを見てみると、大学へ入った頃…

「オーデュポンの祈り」伊坂幸太郎 レビュー

第5回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作品だそうですが、この作品をミステリーと呼ぶのは似つかわしくないような気がしました。村上春樹さんに似たものを感じました。それと、聖句が出てくるわけではないのですが、作者は聖書をある程度学んだ方だと感じました…

「マークスの山」高村薫 レビュー

「昭和51年南アルプスで撒かれた犯罪の種は16年後、東京で連続殺人として開花した。 精神に<暗い山>を抱える殺人者マークスが跳ぶ。元組員、高級官僚、そしてまた、、、謎の凶器で殺害される被害者。バラバラの被害者を結ぶ糸は?マークスが握る秘密と…

「家計簿の中の昭和」澤地久枝 レビュー

同年代のweb友が紹介していたので図書館で借りて読みました。その友は毎日家計簿を付けているそうですが、家計簿は私も結婚以来ずっと付けています。主婦の何割位が家計簿を付けているのかと思いネットで調べてみたら、約3割だそうです。意外と少ないですね…